民抗
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第1節 独立の上訴としての抗告第1款 上訴の概念 民訴法には,当事者または第三者が訴訟上の不利益を防ぐために取ることのできる種々の救済手段が定められているが,そのすべてが上訴ではない。上訴以外にも,種々の救済手段が存在する。上訴は,上訴人に不利な4,当該裁判をした裁判所ではなく,直近上級裁判所の裁判が確定する前に裁判所44(上訴裁判所)による審査の方法で,これを除去しまたは上訴人に有利に変更する救済手段である。上訴には,控訴,上告および抗告がある。控訴は第一審の終局判決に対する不服申立てであり,上告は原則として控訴裁判所の終局判決(例外的に,高等裁判所が第一審として管轄する事件および飛越上告の合意がある場合の第一審裁判所の終局判決)に対する不服申立てである。 控訴および上告については,不服申立てに係る裁判の審査は,移審的効力に基づき審級上上級の裁判所によって行われる(他者コントロールの原則)。原裁判所は自己のした判決の羈束力により原則としてもはやその判決を自ら変更することを許されない。もっとも,民訴法256条によれば,裁判所は判決に法令の違反があることを発見したときは,言渡し後1週間という期間限定で,かつ確定前であって更に弁論をする必要がない場合に限り自ら判決を変更することができるが(変更判決),1)これは判決が羈束力を有することを前提にして厳しい要件のもとでその例外を定めるものである。控訴および上告については,他者コントロールの原則は,変更判決の制度による制限を除き,原則として妥当する。2) 民訴法上,たとえば次の救済手段は上訴ではない。3)これらは事件を上級4444444444〔3〕第1章 総 説 91)変更判決については,松本・立法史と解釈学98頁参照。2)Vgl. C.Saueressig, Das System der Rechtsmittel nach dem Zivilprozessreformgesetz, 2008, S.216.3)反対:P. Gilles, Rechtsmittel im Zivilprozeß, 1972. Gillesは,移審的効力の有無と関係なく,当事者に不利な裁判が正しいかどうかの審査と原裁判の法形成的な除去に奉仕するすべての手続上の制度を,上訴と理解する。そして,上訴の目的を原判決の取消しを意味する破棄で理及び最高裁判所に対する許可抗告」ジュリ1098号(1996年)86頁以下

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