民抗
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⑴ 意 義⑵ 移審的効力の範囲〔4〕〔5〕〔6〕10 第1編 民事訴訟法上の抗告1 移審的効力審に移審しない。─再審の訴え(民訴338条以下)─仲裁判断の取消申立て(仲裁44条)─訴訟費用額の確定処分に対する異議の申立て(民訴71条4項)─請求異議の訴え(民執35条)─仮執行宣言前の支払督促に対する督促異議の申立て(民訴390条)─仮差押え命令および仮処分に対する保全異議(民保26条) 上訴によって,事件についての裁判権能が審級上上級の裁判所に移動する。事件についてのそれまでの手続は,上訴裁判所に係属し,さらに審理・裁判される。このように上訴には,事件の管轄を上級裁判所へ移す効力がある。この効力を上訴の移審的効力と呼ぶ。移審的効力により,上訴裁判所はその事件につき審理・裁判できるようになる。不服申立てに係る裁判の審査を直近上級裁判所に委ねることによって,裁判の正しさの保障が向上することが目指される。4) もっとも,上訴裁判所は上訴人が不服を申し立てていない原裁判部分を取り消しまたは変更することを禁止されているので(民訴304条),その限りで上訴裁判所の裁判権限は制限されている。この不服申立てのない部分が上訴裁判所に移審しているか,また移審している場合にはどのような態様においてかという点について,争いがある。控訴および上告について,あるとし,上訴手続の訴訟物は不服申立てに係る裁判の取消申立てだと主張するGillesの見解の詳細については,松本・民事控訴審ハンドブック〔58〕以下を参照。4)W. Ohndorf, Die Beschwer und die Geltendmachung der Beschwer als Rechtsmittelvor-aussetzungen im deutschen Zivilprozessrecht,1972, S.40; Leipold, Rechtsmittel als Verfahrensfortsetzung oder Entscheidungskontrolle, in: Gilles/Röhl/Schuster/Stempel[Hrsg], Rechtsmittel im Zivilprozess, S.285, 287.第2款 移審的効力と確定遮断効 移審的効力と確定遮断効は,上訴の特徴的なメルクマールである。これらのメルクマールの全部を欠く救済手段は,上訴ではない。

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