民抗
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〔7〕〔8〕第1章 総 説 112 確定遮断効 確定遮断効は,判決に対する上訴の第2のメルクマールである。これは,上訴の提起により原判決の確定(形式的確定力の発生)が阻止されることを意味する。原判決の確定が阻止されることによって,審級上上級の裁判所において手続を続行することが可能になり,訴訟手続は第一審の裁判によって終了しない。これによって,形式的確定力および無条件の執行力の発生が阻止される。7)裁判の確定を要件とする裁判の効力の発生,したがって既判力をもちうる裁判については既判力の発生が,上訴の提起によって阻止される。8) ところが,通常抗告に服する決定・命令には裁判官に対する覇束力はなく,裁判官はいつでもこれを変更することができるので,これに対する抗告は確定を遮断する効力を有しないことに注意しなければならない。即時抗告に服する決定・命令は抗告の提起によって確定を阻止されるので,抗告は確定遮断効を有する。いわゆる上訴不可分の原則が確定遮断効のみならず移審的効力についても通説によって主張されているが,5)通説の主張する移審的効力の範囲については問題があり,また実際上も不合理な結果をもたらすとして批判されている。6)5)通説は,請求の客観的併合において,ある請求についての裁判所の判決に対して控訴が提起された場合,不服申立てのされなかった他の請求も控訴審に移審するが,民訴法304条により,この他の請求は控訴審の裁判対象にはならないと説明する。菊井/村松・全訂Ⅲ59頁;基本法コンメ・民事訴訟法⑶21頁[宇野]。しかし,不服申立てがないため控訴審の裁判対象にならない事項がどうして控訴により無条件で控訴審に移審するとされなければならないのか,明らかでない。なぜなら,移審とはその事項が控訴審に係属し,審理裁判できる状態になることをいうからである。6)移審的効力に関する「上訴不可分の原則」の批判として,松本・民事控訴審ハンドブック〔51〕以下参照。7)Musielak/Voit/Ball, ZPO 16. Aufl., Vor §511 Rn.1.8) Habscheid, Freiwillige Gerichtsbarkeit, 7. Aufl., 1983, §26Ⅱ4; Bork/Jacoby/Schwab/Elzer, FamFG 2. Aufl., 2013, §45 Rn.9.第3款 抗 告 抗告は,控訴や上告のように判決に対する上訴ではない。抗告は,決定および命令という,終局判決に先行し,民訴法に服する付加的な中間的な

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