民抗
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第2節 抗告制度の沿革とその問題点第1款 1877年ドイツ民訴法による抗告制度の創設1 抗告制度の導入 抗告制度は,1877年に制定されたドイツ民訴法を1890年に大部分継受することによって日本に導入された。日本の民訴法が継受した1877年のドイツ民訴法の立法者は,ドイツ普通法における上訴の概念は歴史的所与のものではなく,種々の意味で用いられたのであるが,この法律は,上訴をまだ形式的確定力の生じていない裁判に対して不服申立てを許す訴訟上の救済手段と定義した。そして,立法者は,控訴,上告および抗告だけが上訴であるとして,上訴の概念をこれらに限定した。12)立法者は,抗告という上訴の目的を,次のように説明した。「これらの上訴のうち,抗告は,より下位の副次的な意味(mehr untergeordnete, nebensätzliche Bedeutung)をもつ。不服申立ての対象をなすのは,比較的単純であまり重要でない裁判である。それゆえ,この不服申立て自体およびその処理については,できるだけ単純な方式が推奨される」13)と。そして,抗告という上訴は,上訴のシステムを補充するという目的と,副次的な争点を排除し,訴訟の資料をその他の上訴,したがって手続自体のために単純化するという目的の2つの目的に奉仕する」と。14)この説明にあるように,簡略な裁判には簡略な上訴方法がふさわしい,という考え方が,抗告という上訴の承認の根底にある。ある手続上の問題(たとえば,裁判官の忌避)についてなされた裁判所の裁判に対する不服申立てに関し,まず本案手続の全体について第一審において審理を実施して終局判決を行い,この終局判決に対する控訴に基〔10〕第1章 総 説 13の克服には至っていないように思われる。1996年に制定された現行民訴法においても,立法者は相変わらず控訴に関する規定等の準用によって,抗告について規律する態度に終始した。222頁以下はその代表である。12)Hahn/Stegmann, Die gesamten Materialien zu den Rechs-Justizgesetzen, Bd.2, Abt. 1, 2. Aufl., 1881, Neudruck 1983, §11, S.139.13)Hahn/Stegmann, a.a.O.(Fn.12), S.139.14)Hahn/Stegmann, a.a.O.(Fn.12), S. 374.

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