民抗
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〔11〕14 第1編 民事訴訟法上の抗告2 ドイツ普通法における「単純な抗告」 ところで,この抗告という簡略な上訴が1877年のドイツ民訴法に採用されるに当たっては,歴史的背景があった。著名な普通訴訟法学者であるWetzell(ヴェツェル)16)やRenaud(レナウド)17)によると,ドイツ普通法においては,一方の当事者は相手方当事者に対する訴訟上の地位において不利益な扱いをもたらした「処分(Verfügung)」に対しては,「本来の上訴(eigentliche Rechtsmittel)」による救済が与えられるのであるが,その他にも,裁判所が当事者の求める援助を与えず(司法拒絶または司法遅滞),または裁判官が「懲戒権(Disciplinargewalt)」を不法に行使して,職務上の義務違反を犯した場合には,当事者相互間の関係はこれによって影響を受けないので「本来の上訴」は与えられないけれども,これは抗告(Beschwerde)のきっかけとなる。この場合の抗告は,「単純な抗告(einfache Beschwerde, querela simplex)」と呼ばれた。 単純な抗告は,当事者に不利益を負わせる裁判官自身に対して直接に向けられるものであり,上級裁判官の懲戒権の発動を求めるものと見られた。この抗告は,当事者だけに帰属するものではなく,当該訴訟に関係する者であれば誰にでも帰属するとされた。したがって,裁判官が上司または(たとえば司法上の援助の拒否につき)共助を求められた裁判官から法規違反を受ける場合には,この抗告を自らすることができるとされた。それゆ15)もっとも,簡易な不服申立てとしての抗告は,しかし家事事件手続のような非訟事件の領域において本案についての審判や決定に対する不服申立てとして用いられると,控訴に代わる機能を果たすことになるので,別の問題が生じてくる。これについては後述〔681〕。16)Wetzell, System des ordentlichen Zivilprozesses, 3. Aufl., 1878, Nachdruck, 1969, S.813 ff.17)Renaud, Lehrbuch des Gemeinen Deutschen Civilprozeßrechts, 2. Aufl., 1873, S.628 ff.づき,控訴裁判所が第一審裁判官に裁判の公正を疑わせる事情があったという理由で,第一審判決を取り消すのは訴訟経済上全く望ましくない。このような第一審判決の取消しが行われると,その間に実施された第一審判決に至るまでの手続はすべて無駄になってしまうからである。それゆえ,このような副次的手続における重要な係争問題についての裁判に関しては,本案と切り離し,独立して抗告による是正の道を開くのが合目的的であるといえる。15)

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