民抗
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〔21〕〔22〕22 第1編 民事訴訟法上の抗告2 戦後における特別抗告の導入と実務 ところが,1947年に日本国憲法が施行され,日本国憲法が最高裁判所の違憲法令審査権を導入したことに伴い,民訴法に特別抗告(→〔177〕)の制度が導入された。すなわち,法律上不服申立ての許されていない地方裁判所および簡易裁判所の決定・命令,ならびに再抗告が許されない高等裁判所の決定・命令に対して,当事者は,「憲法の解釈の誤りその他憲法の違反」を主張して,最高裁判所に特に抗告を提起することができるようになった(民訴336条1項。特別抗告)。それゆえ,ドイツ民訴法において法律上不服申立てが許されない決定・命令に対して法的審問請求権の侵害等の憲法上の手続基本権の侵害を主張できないために生じた制度的な問題は,日本国憲法の時代になると,日本法においては,法的審問請求権の侵害のけられるべきである。⑸ 責問が理由を有する場合には,裁判所は救済を行い,責問に基づき必要である限り,手続を続行する。手続は口頭弁論終結前に存在した状態に復する。第343条が準用される。書面手続においては,口頭弁論の終結に代えて書面を提出することのできる最終時点が口頭弁論の終結に代わる。」第4款 日本法における問題状況1 問題の所在 日本の民訴法は大部分1877年のドイツ民訴法を継受したので,ドイツ法と同じく,日本の民訴法には不服申立ての許されない決定・命令が多数存在する(→〔71〕)。ドイツ法においてドイツ民訴法の不備の問題が生じ,連邦通常裁判所が多数の裁判によって対応を迫られたのは,法律上不服申立てが許されていない決定・命令に法的審問請求権の侵害などの重大な瑕疵がある場合の救済についてであった。法的審問請求権が1877年の民訴法の制定以前にも各地の地方訴訟法においてすでに重視されていたドイツと異なり,ドイツ法を継受した日本では,法的審問請求権の侵害を初めとする手続基本権の侵害について人々の意識があまりにも希薄であり,戦前の学説においては殆ど法的審問請求権の侵害が問題にされなかったという事情がある。

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