1 債権回収のプロセス 取引先において約定弁済が継続している限りにおいては,債権回収に備える必要はないが,支払猶予の要請がなされるなど約定弁済が滞る状態となった場合には,債権回収の対応に着手することになる。一般に債権回収のプロセスは,①相手方と面談,情報収集,②取引条件変更等の対応,③担保,保証の取得,④債権回収交渉,⑤仮差押え等の保全処分や裁判手続,⑥強制執行手続という経過をたどることになる。裁判に至らずに交渉段階で回収を実現できる場合もあるが,他方で,相手方の対応や状況によっては,十分な交渉を経ずしていきなり訴訟を提起せざるを得ず,または,相手方の資力がないことが判明して途中で債権回収を断念する場合もある。 相手方との交渉においては,上記債権回収のプロセスを理解した上で,例えば,最初の面談段階(①)においては,今後,有効な担保を取得する(③)ために,相手方がどのような資産を有しているのか情報収集するなど,常に,次のプロセスにおける対応をどのようにしたら円滑に実施することができるかを念頭に置きながら,実践することになる。2 相手方との交渉,情報収集のための準備 相手方と最初に面談する場合には,弁護士に立会いを依頼し,または交渉そのものを弁護士に依頼することでうまくいくこともあるが,早期に対応すべき段階であるため弁護士に依頼する時間がなく,また,弁護士が表に出た場合に相手方が警戒してしまう場合もあり得ることから,多くの場合,当初の面談では,当事者本人(担当者)にて交渉を担当することになる。 面談担当者は面談を実施した内容を,会社の関係者や顧問弁護士とすぐに情報共有し,交渉のポイントを確認した上で次の交渉に望むことになる。この場合,まだ情報量が少ないため,最初の面談において結論を出さず,相手方から情報や条件をできる限り多く出させた上で,一旦持ち帰って検討し,Q1−1債権回収に向けての準備 債権回収のためにどのような準備をしたらよいか。3Q1−1 債権回収に向けての準備解 説
元のページ ../index.html#33