債権回収
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4第1章 債権回収のための準備今後の対応方針を決めた上で次の面談に望むという方法にて,短期間に複数回の面談交渉が実施できると望ましい。しかしながら,相手方の事情によって面談日程が決まらなくなる場合もあるため,早期に方針を決め,早期に合意していく対応を取らざるを得ないことにも留意が必要である。 このように,早期にかつ多様な対応を行うことになるため,会社においては債権回収担当チームを構築した上で,交渉のやり方についてポイントを押さえたマニュアル等を整備しておくことが望ましい。3 債権回収策を講じるための準備 面談担当者による協議によって債権回収を実現できなかった場合には,担保権実行や訴訟提起等の法的対応を含めた債権回収策を実施することになるため,それに備えて,相手方との協議は弁護士に依頼する場面となる。この協議のための事前準備においては,いざというときに法的対応を円滑に行うため,当該取引において有効な担保取得の方法を検討し,また,法的措置を円滑に実施することができるように契約書の内容を確認した上で,対応しやすい内容に整理しておくことなどを行う。 例えば,商品を転売先に直接納品している取引形態の場合には,動産売買先取特権に基づく物上代位によって,転売債権を差し押さえた上で回収を図ることが可能となるため,その権利の証拠となる取引関係の資料において,対象となる商品を容易に特定できるような形で表記する対応を行う。継続的な取引関係にある場合には,1つの債権について延滞が生じたとしても,他の債権については支払期限が到来していなければ債権回収を実施することができないため,一定の事項が生じた場合には全ての債権について期限の利益を喪失することができる旨の条項を契約書に規定し,また,当方が履行義務を負った状態を早期に解消するため,契約の無催告解除条項を規定しておく。さらに,裁判での立証を考え,発注書には取引内容が特定できる明確な記載を行うようにし,納品書においても取引内容について同じ記載内容とすることによって,取引内容の同一性を容易に証明できる対応を行う。また,消滅時効を完成させないために,毎年,取引の相手方に対して債権残高証明書を発行してもらい,承認による消滅時効の更新(民152条)を行っておくことも重要である。〔髙井 章光〕

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