2遺言は本来,遺言者による自己の財産の自由な処分ができることを認めた制度です。しかし,一定の場合には遺言そのものが無効とされる場合があります。まず,遺言は,民法所定の方式に従って作成される必要があります(遺言の要式性)。したがって,方式に違反した遺言は原則として無効と判断されることになります。例えば,自筆証書遺言を作成する場合には,遺言者がその全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押す必要がありますが(民法968条1項),氏名の自書を失念して書き忘れた場合,その遺言は無効となります。また,方式に違反をしていない場合でも,遺言が無効とされる場合があります。遺言は相手方のない単独行為であって,その性質上,遺言能力は財産法上の行為能力までは必要なく,満15歳に達した者は誰でも遺言することができるとされています(民法961条)が,民法上,遺言の無効が争われる代表的な例は,遺言をした人(遺言者といいます。)が遺言書作成当時に既に遺言をするだけの能力(遺言能力といいます。)が失われていた可能性があるとして,遺言能力の有無が相続人間で争いになる場合です。民法上,成年被後見人であっても,事理弁識能力が回復している限り医師2人以上の立会いの下に遺言をすることができるとされています(民法973条1項)。このように,成年被後見人であっても遺言書作成時点において,遺言の内容を理解して,遺言をすることに意欲を示していれば遺言能力があることになるわけですが,そのような能力もない中で行った遺言は無効とされるわけです。高齢化が急速に進む中,遺言能力が争点となる遺言無効紛争が今後ますます増加することは容易に想像されるところです。遺言が無効になる場合があることは,前記1で述べたとおりです。では,遺言の無効を主張したい相続人がいた場合に,手続はどのような流れで捉えられるのでしょうか。ここで,例えば自筆証書遺言であるにもかかわらず,本文がパソコンで印1 遺言が無効になる場合2 遺言の無効を争う場合の手続の流れ
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