遺言無効
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B 「遺言能力のほかには,自筆証書遺言の場合は自署や日付・押印・署名などの要式の不備が考えられます。公正証書遺言の場合は,公証人が作成していますから,形式的な不備は考えにくいのではないでしょうか。」A 「遺言公正証書の場合でも,その作成の手順をきちんと踏んでいないことが無効原因となる場合があります。遺言者の意思能力が十分でない場合に必要な手順を踏まずに公正証書を作成したことが,無効原因になるとした判例はいくつも出ています。」B 「公証人が関与しているからといって手順に問題が全くないわけではなA 「遺言能力についてはどのような資料が必要になりそうですか。」B 「Yさんの話だと,Xさんはアルツハイマー型認知症に罹患していたとのことですから,病院のカルテ,介護認定調査に関する資料,介護事業者のサービス提供記録などが,最も基本的な資料になります。」A 「ただ,今の時点でYさんの手元にはそういった資料はないでしょうね。医療機関の保有している診療記録は相続人本人が請求しないと対応してもらえない場合がありますので,Yさんに取得をお願いすることにしましょう。」14いんですね。判例を調べてみます。」A 「遺言公正証書の証人二人が誰になっているのか,どこの公証役場の,どの公証人で,その公証人は現在も在籍しているのか,検察官出身かそれとも裁判官出身か,作成場所は公証役場かそれとも遺言者の入所施設か,なども確認しておいてください。公正証書が作成された状況や経緯が具体的に分かってくる場合があります。では,来週のYさんとの打合わせについて準備をしましょうか。まずは遺言書の内容の確認が必要になりますから,遺言書の原本かコピーを持ってきていただく必要がありますね。」B 「相続関係については,さっきの話でおおむね分かりました。戸籍の証明書を取り寄せて確認することになりますが,できれば事前に本籍が分かっていれば証明書の収集の手間がだいぶ省けます。打合せの時にYさん自身やZさん,ご両親の本籍を教えてもらいましょう。」B 「Xさんの日常生活についてのエピソードもおうかがいする必要がありそうです。」

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