遺言無効
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推薦のことば厚生労働省の最近の調査などによれば,高齢者(65歳以上)の多くは,健康のこと,老後資金のこと,生活の自立,認知症のことなどを不安に感じておられるそうですが,一方で,こうした調査結果を見る限り,遺言や相続争いについてはあまり関心がないようです。高齢者にとっては目の前の生活が喫緊の問題であり,死後の世界まで心配していられないのかもしれません。しかし,相続人となる子世代にとって,相続はきわめて切実な問題です。といいますのも,高度成長期の恩恵にあずかった親世代と異なり,子世代はバブル崩壊等の洗礼を浴びて経済的余裕がなくなっているからです。そこで,子は親に遺言書を書いてくれるよう望みますが,親は,よほど切羽詰まらなければ遺言書を書いてくれません。こうして遺言書を作成する年齢も,必然的に高齢化します。日本人の平均寿命は,女性が87.32歳,男性が81.25歳ですが,これは平均値なので,実際には多くの高齢者が卒寿(90歳)を迎えられることでしょう。長寿はたいへん結構ですが,他方で,85歳から89歳の認知症有病率は40%,90歳から94歳の同有病率は60%を超えます。ご承知のように,認知症だと遺言できないというわけではありませんが,「80代以降の遺言者が作成する遺言は常に無効を疑われる運命にある」といっても過言ではありません。しかし,遺言無効確認の訴は,きわめて専門的な訴訟です。遺言能力,遺留分侵害額請求,遺言執行などに関する正確な法律知識は当然として,それ以外に,認知症や介護認定など病気や介護の知識まで必要になるからです。当事者間の感情も先鋭に対立し,相談者の話が昭和の年代から始まっても,根気よく伺わなければなりません。見通しを誤れば隘路に入り込んでしまい,依頼人から恨まれる可能性さえあるので,相続分野の経験がない弁護士にとっては荷が重い事件類型といえるでしょう。これを克服するには,準備しかありません。本書は,はじめて遺言無効の相談を受けたときから訴訟における主張立証i

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