② 特徴歳)の4人家族である。B2は,知的障がいを抱えており,定職に就いていない。S2は,所有する建物を,グループホームを営む社会福祉法人Y(以下「Y法人」という。)に賃貸し,B2は,そこで生活している。S2は,自分やA2が認知症になったり,死亡したりしたときには,Y法人との契約を維持することができなくなってしまうのではないかと懸念している。そこで,S2を委託者,T2を受託者,建物とその敷地及び金銭を信託財産とし,受益者は当初はS2,その死亡後はB2,B2の死亡後には,建物を売却しその金銭をT2に帰属させる信託契約を締結した。委託者S2は,自分の死傷等により財産管理が十分に行えなくなってしまう事態に備えて信託を設定しているが,この事例は,先の⑴の事例と異なり,自分の利益のためだけでなく子等の他人の利益のためにも信託を設定している。そのため,委託者(兼当初受益者)S2のみの意思により信託を途中で終了させることが適切であるかどうかについて,先の⑴の事例より,さらに厳しい判断が求められる。また,受益者は,当初はS2,その死後は障がいを抱えるB2であり,いずれも自身による権利行使や意思決定が難しい状況になることが想定される。仮に,委託者S2の死亡後の委託者の地位を,法定相続人(A2,T2及びB2)又は第2次受益者B2に移転させるにしても,「当初委託者」S2とそれ以外の「後継委託者」は具体的・現実的な存在としてはそれぞれ異なることを踏まえる必要がある。◦委託者兼受益者による信託の終了の自由を(どの程度)制約するか◦受益者が権利行使や意思決定ができない場合の手当て◦当初委託者と後継委託者の区別Y法人S2賃貸借T28第1部 「別段の定め」とは何かA2S2委託者受益者⑴B2T2信託契約B2受託者受益者⑵T2信託財産帰属権利者
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