8_別段
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信託契約⑶-2 ファミリービジネス7における株式保有割合の維持① 事例② 特徴◦受託者法人における意思決定をどのように行うか◦(受益者が多数である場合に)受託者からの受益者に対する情報開示をどのように合理化するかS4(50歳・男性)は,父A4から継いだ製造業を営む株式会社W社(上場会社)の社長である。親族内のW社の株主は,S4(20%),A4(10%),妹B4(5%),叔父C4(10%・専務),叔父の子D4(10%)である。B4やD4は,W社の経営に関与しておらず,B4は浪費家である。また,A4やC4の相続時には相続税の納税のためにW社の株式を売却する必要が生じると税理士からも言われている。そこで,S4は,親族内の他の株主を説得し,これらの者を委託者兼受益者,専用に設立した一般社団法人T4を受託者,W社の株式を信託財産とする信託契約を締結した。個人が株式を保有していることは,親族での株式保有割合の維持を阻害する要因にはなっても,これを増進する要因になるとは考え難い。一方,株式,特に上場会社の株式は,原則各個人の自由な判断により処分が可能であるし,株主の死亡によりその相続財産となり,株式は分散する。配偶者に相続させ10%C410%A4D4S4B410%20%7 拙稿「なぜファミリービジネスに信託の活用が有用か―新井誠教授による『信託の実質』と『信託の転換機能』の民事信託実務上の課題とともに考える」澁谷彰久ほか編著『成年後見・民事信託の実践と利用促進』(日本加除出版,2021年)345頁を参照。第1部 「別段の定め」とは何か10S4ら株主委託者受益者委託者受益者委託者受益者5%委託者受益者W株A4のT4法人直系卑属等受託者受益者C4の信託財産直系卑属等受益者

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