8_別段
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第2民事信託の契約書で「別段の定め」をする必要性1 はじめに2 信託法が民事信託のみを対象とするものではないことると,その夫婦に子がいなければ配偶者の相続により他家へ流出することにもなる。そこで,親族での株式保有割合を維持するために,あえて株式処分についての個人の自由を制限するために信託を利用することが考えられる。もっとも,信託は,受益者のために受託者が財産を管理するための制度であって,受託者が無償で議決権を行使することができるようにするための道具ではない。◦信託期間中の信託からの離脱(中途解約等)をどの程度認めるか◦信託からの離脱を制約するとして,どのような代償措置を講じるか◦複数の受益者がいる場合の受益者の意思決定についてどのように行うか◦受託者による株主権の行使について受益者に関与させるか,どのように関与させるか信託法は詳細なルールを規定している。そして,信託契約書に定めがない事項については,そのルールが適用される。別段の定めをすることは,信託契約書の内容を詳細又は複雑にすることにつながり,信託契約の当事者にそれだけ高度な意思能力を要求する。信託の設定の容易さの観点からすれば,できるだけ別段の定めをしないという選択もあり得るところである。しかし,民事信託の信託契約書に別段の定めが必要になると考えるのは,信託法からの事情(→2及び3)と信託法の適用を受ける民事信託の利用者側の事情(→4及び5)があるからである。信託法は,第1条にて「信託の要件,効力等については,他の法令に定めるもののほか,この法律の定めるところによる。」としているとおり,信託民事信託契約書での「別段の定め」の必要性第2 民事信託の契約書で「別段の定め」をする必要性2信託法が民事信託のみを対象とするものではないこと3「現に存しない」場合のデフォルトルールの不適用4民事信託の信託関係人は生身の人間であること5「委託者」の取扱い11

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