8_別段
51/66

① 定めを設ける必要が想定される状況② 定めを設けるメリット③ 定めを設けるデメリット④ コメント信託報酬が無報酬であることなどの事情から,受託者の軽過失による義務違反については責任を問われないようにしたい場合が想定される。受託者においては,故意又は重過失が認められる義務違反についてのみ責任を負うことになるため,責任を負うべき範囲が狭くなる。受益者においては,信託財産について損害が生じた場合であっても,それが受託者の軽過失によるときは損失てん補請求(信託法40条)等をすることができなくなる。寺本114(注5)が条項例のような「故意または重過失の場合にのみ任務違反の責任を負うこととする場合」を「受託者の注意義務を軽減」する例として挙げている(能見75も責任軽減特約を受託者の善管注意義務の軽減が可能であることの例として挙げる。)。義務違反とそれにより生じる責任は別であるとする見解(新井254)によれば,条項例は義務の程度を軽減する定めではなく,責任を負う範囲を限定する定めということになる。これに対して,「軽過失免責の定め」について義務違反と過失とを分けて考える必要はないとして,その免責特約は,低下したレベルでの行為義務を課すという特約であるため,注意義務の軽減とは異なるとする見解もある(道垣内172)。受益者注意義務故意重過失第1 29条2項ただし書無報酬等受託者43

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る