条項例8⑷受託者による利益相反行為後の受益者への通知の省略① 定めを設ける必要が想定される状況② 定めを設けるメリット③ 定めを設けるデメリット④ コメント受託者が受益者と同居するなど日常的な連絡が十分であるため,法定の通知義務を課すことが煩わしく思われる場合が想定できる。通知義務が免除されることにより,受託者の事務負担が軽減される。この条項例は,受益者に対する通知全部について免除することとしているため,重大な利益相反行為についても受益者がそれを知らない事態が生じかねず,受託者に対する責任追及をする機会を逸してしまうおそれがある。利益相反行為の全部について通知義務を免除することが適切か否かについては慎重な検討を要すると考える。その信託において定型的・継続的な利益相反行為が想定される場合には,通知義務を免除する利益相反行為を特定して,それ以外の利益相反行為については通知義務を課すとするのが相当な場合が多いと思われる。また,上記①で述べたような事情は,その後に変更される可能性が十分にある。例えば,同居を解消した場合などである。同居を解消する理由にもよるが,例えば,それが意見の食い違いや不仲を理由とする場合,法定の通知の代替であったコミュニケーションが絶たれるため,以後,受託者は受益者受益者固有財産信託財産通知同居第2 31条3項ただし書 利益相反受託者49受託者は,信託法第31条第3項本文が定める通知をすることを要しない。
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