自原住
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 本書は、主として公営住宅に係る滞納使用料請求訴訟及び建物明渡請求訴訟について解説するものである。そこで、本章では、両訴訟を提起するのに必要な限度で、公営住宅に関する一般的、基礎的な事項や訴訟提起に関する一般的、共通的な事項について解説する。 なお、訴訟提起後の手続きについては、第5章で説明する。2   第1章  総 論第1 公営住宅法の概要1 公営住宅とは 公営住宅とは、地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅及び附帯施設で、公住法の規定による国の補助に係るものをいう(公住法2条2号)。 地方公共団体とは、市町村及び都道府県をいう(同条1号)。東京都の特別区(23区)は、自治法281条2項において「特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務並びに……を処理する。」と規定されているところ、公営住宅の供給は自治事務であって(自治法2条8項)、地域における事務に該当し(同条2項)、公住法上も特に都が処理するとは規定していないので、自治法281条2項に基づき東京都の特別区も公営住宅の供給を行うことができる。本書においては、以下、普通地方公共団体を「自治体」といい(条文、判例等の引用文において用いられている場合を除く。)、「自治体」には東京都の特別区を含むものとする。 自治体は公営住宅の供給義務を負っており(公住法3条)、他方、公営住宅の事業主体となり得るのは自治体だけである(公住法2条16号)。 公営住宅には、公住法2条2号に定めるとおり、所有方式のもの(建設、買取り)と借上方式のものがある。 公営住宅は、自治法に定める公の施設である。したがって、その設置又は管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない(自治法244条の2第1項)。公住法はこれと同旨の包括的な規定を置いているが(48条)、家賃、入居者資格、他用途使用等については、条例必須事項とされ、同法の各規定においてその旨明定されている。

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