「住宅に困窮する低額所得者」を具体的な要件に置き直したものが公住法23条に定める入居者資格である。同条によれば、公営住宅の入居者は、少なくとも下記⑴、⑵の要件を具備する者でなければならない。平成23年の改正により下記⑶の同居親族要件は法定要件ではなくなったが、自治体の裁量で要件を加重することは可能であり、X市は⑶を入居者資格要件としている(X市条例6条1項2号)。また、下記⑷は多くの自治体が採用している入居者資格である。X市は⑷の①及び③は入居者資格要件としておらず、②については、X市の居住者に限定している(同条同項1号)。⑴ 入居収入基準 公営住宅に入居できるのは、収入分位25パーセントに相当する政令月収15万8000円を上限として条例で定める金額以下の者である(公住法23条1号ロ、公住令6条2項)。X市の場合、条例で定める金額は15万8000円である(X市条例6条1項4号ハ)。但し、高齢者、障害者世帯等であって、特に居住の安定を図る必要がある場合として条例に定める場合(以下「裁量階層」といい、裁量階層以外を「原則階層」という。)については、入居収入基準が緩和されている。 収入分位とは、総務省による家計調査の結果に基づいて、全世帯(2人以上世帯)を収入順位に並べ、各世帯が下から何パーセントの範囲に位置しているかを示した数値をいう。収入分位25パーセントは、世帯の所得が下から4分の1の階層ということを示す。 政令月収とは、公住令1条3号に定める収入をいい、年間粗収入から給与所得控除、扶養親族控除等を行ったうえで月収換算することにより算定したものをいう(【図表1−1】参照)。 上記次第で、公営住宅に入居できるのは、世帯の所得が下から4分の1の階層(政令月収15万8000円以下)の者だけである。⑵ 住宅困窮要件 公営住宅に入居できるのは、「現に住宅に困窮していることが明らか」な者でなければならない(公住法23条2号)。具体的には公住令7条各号に規定されている。同条には、住宅以外の建物若しくは場所に居住し、又は保安上危険若しくは衛生上有害な状態にある住宅に居住している者(1号)、他の4 第1章 総 論
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