自原住
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1 設例1 自治体が入居中の使用者に対して使用料等の金銭の支払いだけを求める訴訟を提起することは殆どないと思われる。通常は、使用料等の滞納を理由に使用許可を取り消したうえ、建物の明渡しと共に使用料等の支払いを求めることになる。そうした案件については第3章で扱う。本章で扱うのは金銭の支払いだけを求める訴訟であり、その殆どは明渡済みの案件である。滞納使用料、滞納共益費、使用損害金の請求がその主なものであるが、明渡し後に補修費用を請求することもある。補修費用の請求についても本章で扱う。58   X市は、公住法及びX市条例に基づき、その所有する土地上にX市営A住宅を建築し、公営住宅として管理している。 X市の住民であったYは、平成20年4月3日、X市より同住宅301号室(以下「本件住宅」という。)の使用許可決定を受け、同月10日本件住宅に入居した。 Yは、平成21年秋頃から支払いがしばしば滞るようになり、平成24年1月20日現在、平成23年7月分から同年12月分まで6か月分の使用料及び共益費合計30万3000円が滞納となっていた(本件住宅の平成23年度の使用料は月額5万円、共益費は月額500円、合計5万0500円。以下、使用料と共益費を併せて「使用料等」という。)。 X市の担当者はYに対して再三にわたり督促、催告をし、滞納使用料等の解消を求めたが、一向にらちが明かなかった。 そこで、X市は、平成24年1月20日、Yに対して、配達証明付内容証明郵便により、上記6か月分の滞納使用料等を同月末日までに支払うよう催告すると共に、同日までに支払いがないことを条件に使用許可を取り消して明渡しを求める旨の意思表示をし、同通知は同月21日Yに到達した。 第2章 滞納使用料等の金銭の支払を求める訴訟第1 使用者に対する滞納使用料等請求訴訟

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