1) 前記第1章、第3、3の⑷参照。2) 引渡しは一般に鍵を交付するという方法により行われることが多い。なお、賃料を発生させるためには、必ずしも引渡しが必要というわけではない。賃貸人としては、目的物を使用可能な状態に置けば、賃借人が現実にこれを使用しなくても賃料を請求できる(大判明37.9.29民録10輯1196頁、大判昭9.9.8裁判例8巻民205頁)。3) 公営住宅については、借賃増減請求権を定めた借地借家法32条の適用はない(東京地判昭62.3.31判時1265号112頁)。この点について、同判決は「(公営住宅)法の家賃の決定、変更に関する諸規定の目的、内容、構造に照らすと、法13条及びこれに基づく諸規定は家賃の増減事由、方法及び効果について定めた借家法7条1項(現:借地借家法32条)の特則として定められたものであることは明らかであるから、右の公営住宅の家賃の変更事由等については専ら特別法たる法13条等の諸規定の適用があり、借家法7条1項の規定の適用は排除されているというべきである。」と判示している。1 使用料・共益費の請求⑴ 使用料支払義務の根拠と性質 使用料支払義務、即ち、賃料支払義務は、賃貸人が賃借人に対して負う使用収益させる義務と対価関係に立つもので、賃貸借契約の本質的義務である(改正前民法601条)。 賃料支払請求権は、賃貸人が賃借人に対して住宅を引き渡したとき2)から日々発生し、賃貸借契約が終了した時点でその発生をやめる(賃貸借契約終了後も賃借人が居座っているときは使用損害金が発生する。)。 なお、X市条例では、使用許可の日から使用料を徴収することができるとしている(X市条例13条1項)。これは、民法上の原則(引渡時から発生する。)に対する特約と解される。⑵ 使用料額の決定と支払時期 公営住宅の使用料は、入居者の収入申告に基づき政令に定める基準により決定されており、毎年の所得に応じて使用料が変動する(第1章、第1の5参照)3)。 使用料の支払時期は公住法上特段の定めはないが、X市市営住宅の場合は、民法の原則(後払い)どおり、当月分を毎月末日までに支払うこととされている(民法614条、X市条例13条3項)。 なお、建物明渡請求とともに上記①ないし③の支払いを求めるときは、上記①ないし③は附帯請求1)となるが(民訴法9条2項)、建物明渡請求を伴わない設例1では、上記①、②は主たる請求、③は附帯請求となる。60 第2章 滞納使用料等の金銭の支払を求める訴訟
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