自原住
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9) 債務不履行による損害賠償請求について定める改正前民法415条は改正されているが、10) その他の法的根拠として、所有権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)や不当利得返還請求権(民法703条)も考えられる。名義人であったものに対して請求する場合には、主張立証の容易さから、債務不履行構成で請求するのが一般的である。3 使用損害金の請求⑴ 法的根拠 使用料滞納を理由に使用許可を取り消し(賃貸借契約を解除した後)、入居者に対して明渡しを求めてから実際に明渡しがなされるまでには時間的間隔が生ずることが多い。 例えば、設例1において、Yは平成24年1月末日時点で使用許可が取り消されたにもかかわらず、同年2月末時点まで本件住宅の明渡しを行っていない。自治体は、このような入居者に対して、使用損害金の支払いを請求することができる。 使用損害金支払請求権の法的根拠は、賃借人が負う目的物返還義務の債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償請求権(改正前民法415条9))である10)。 使用損害金は目的物が返還されるまで日々発生し続けるが、その起算日は目的物返還請求権が発生した日の翌日、即ち、賃貸借契約が終了した日の翌日である(X市条例39条1項2号、4項参照)。⑵ 賠償額の予定 使用損害金を目的物返還義務の債務不履行に基づく損害賠償請求権と捉えると、賃貸人の蒙る損害としては、得べかりし利益としての使用料(賃料)相当の損害金が先ず想定されるが、賃貸人の蒙る損害はそれのみに限られない。また、使用損害金のことを使用料(賃料)相当損害金とか、共益費を含め、使用料(賃料)・共益費相当損害金、使用料(賃料)等損害金ということもあるが、賃貸人の蒙る損害は使用料(賃料)や共益費に限定されないのであるから、本書では、債務不履行に基づく損害の全てを包括する概念として「使用損害金」という用語を用いることとする。 ところで、X市の場合、使用損害金の金額は、近傍同種の住宅の家賃の解除することなく、自動的に契約解除の効果が発生する。改正の前後で実質的な変更はない(後記4「Q&A」Q13参照)。62   第2章 滞納使用料等の金銭の支払を求める訴訟

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