行為依存と刑事弁護
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支援まで必要なのではないか,というより根本的な視点を持って,アドバイスできるようになります。具体的には,債務整理についてアドバイスをすることに加えて,債務の原因となるギャンブルについて適切な相談機関や治療機関を紹介することで,多重債務の連鎖を断ち切る根本的なアドバイスを提供できることになります。 本書の各論は必ずしも民事事件を念頭にした内容ではありませんが,各論で紹介される治療や支援は民事事件でも役立つ内容であることを意識して読み進めることをお勧めします。4  第1章 行為依存症者を弁護すること~本書の活用方法など~ 3 刑事事件 また,依存行為そのものが犯罪行為に当たることがあります。窃盗行為や痴漢行為などは,それ自体が窃盗罪や強制わいせつ罪などの刑事事件となります。 弁護士は,当番弁護士や国選弁護人として,また私選弁護人として,行為依存症者に出会う機会があります。彼らの再犯を防ぐために,彼らを適切かつ有効な治療機関や支援団体に繋げることが,弁護活動の大きな柱になります(具体的な弁護活動は本書各論を参照)。4 まとめ 弁護士は,法律相談や民事事件,刑事事件,いずれにおいても行為依存症者と出会う可能性がある職種である,というイメージをお持ちいただけたでしょうか。 弁護士が,依存症やその治療に関する知識を多少なりとも持っていることで,依頼者が抱える法律問題を,行為依存というその根本原因から捉えることができるようになります。そのうえでなされる法的アドバイスや弁護活動は,表面上の問題解決に留まらず,おのずと彼らの悩みや苦しみを根本から解決するきっかけを提供するものとなるでしょう(最近では「治療的司法」という分野でこのような弁護活動を実践する弁護士も増えて

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