行為依存と刑事弁護
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第3章性性性性性性性性性性性性性性性性なっています。 加害者の生育歴に問題があったという解釈もよく見られます。つまり,その加害者も子ども時代に虐待,とりわけ性的虐待を受けたことがあり,その被害体験が彼を加害行為に走らせた何らかのリスク要因になっているという説です。これを「被害者から加害者の道」や「アディクションの世代間連鎖」という文脈で語る臨床家もいます。 たしかに,性犯罪者のなかにはそうしたトラウマティックな過去を持つ者もいないわけではないですが,私がこれまで約2000名(2019年4月時点)を超えるケースと関わってきた中での実感は「性犯罪者のほとんどは,どこにでもいるごく普通の男性である」という結論です。 彼らは家族のためにまじめに仕事をし,家庭を営み,社会生活を送っている人たちです。だからこそ,犯行が発覚したときに周囲の人が口をそろえて「まさかあの人がそんなことをするなんて」というお決まりの反応が返ってきます。 特に日本で最も多い性犯罪である痴漢の加害者は,両親から愛情を受けて何不自由なく育ち,四年制大学を卒業して就職し,結婚して子どももいる男性が全体の過半数を占めています。この統計は,著書『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)の中で記した「平成27年度版犯罪白書」のデータとも概ね一致しています。 こういうと一部の人から「満員電車に乗っているのはサラリーマンが多いからだ」「日本の四大卒の統計は男性が55%,女性が48%だから電車内で痴漢行為をするのは四大卒の男性が過半数を超えるのはあたりまえだ(平成26年度日本学校基本調査より)」と反論されることがありますが,満員電車はなにもサラリーマンばかりが利用しているわけではありませ第1 性依存症について  63(2) 加害者の生育歴,被虐待経験(3) 日本特有の性犯罪─痴漢の実態

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