第4章第4章第1クレプトマニアとは何か窃盗症と刑事弁護第1 クレプトマニアとは何か 1091 クレプトマニアの意義 クレプトマニアとは,物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返されるという衝動制御の障害です。米国精神医学会(APA)が編集する精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSMの日本語版においては,DSM-Ⅳ-TRの版までクレプトマニアを「窃盗癖」と和訳していましたが,これでは単なる癖と誤解されるおそれがありました。その後,2013年に刊行されたDSM-5では,「窃盗症」の訳が当てられ,精神障害であることがより明確となりました。WHOが編集する精神及び行動の障害に関する臨床記述と診断ガイドラインであるICD-10においては,「病的窃盗」の訳が当てられています。 クレプトマニアに関しては,窃盗の社会類型の中でも万引き(shoplift-ing)が念頭に置かれており,クレプトマニアの端的な定義としては,「万引きが止められない」病気と理解すればよいでしょう。 クレプトマニアは,単独で診断される場合もありますが,拒食症や過食+自己排出型(自己誘発嘔吐や下剤乱用)の摂食障害を併発している場合が少なくありません。 また,クレプトマニアに摂食障害が併存している場合,解離性健忘等の解離性障害や溜め込み障害(食品や日用品,資金等をため込む症状)が併存していることが多いことがわかっています。窃盗症と刑事弁護
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