行為依存と刑事弁護
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第5弁護人の役割 以上みてきたとおり,クレプトマニアや摂食障害を抱えた窃盗反復者の弁護に携わる弁護士は,単に不起訴を獲得したり,執行猶予を獲得したりするだけが仕事ではなく,再犯防止のために治療環境を整え,依頼者を治療につなげるところまで意識的に取り組むべきです。裁判等で良い結果を得るのはあくまで手段に過ぎません。患者本人や家族の真の願いは,盗癖からの回復であり,病気に振り回されない普通の生活を取り戻すことです。クレプトマニア患者が回復すれば店舗の万引き被害もその分減少するでしょう。刑事施設の維持費もその分減少します。弁護人の弁護活動が依頼者のみならず社会のためにもなるのです。 クレプトマニアの回復のための環境整備をすること,これこそがクレプトマニア患者の刑事弁護に携わる弁護士の職責です。174  第4章 窃盗症と刑事弁護

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