行為依存と刑事弁護
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第6章第6章その人にあった「刑罰」を考えるということ1) 村井敏邦「戦後日本の強制改革における刑務作業の位置付けと本特集の意義」矯2) 村井・前掲注1)123頁。 一橋大学名誉教授で龍谷大学名誉教授でもある村井敏邦は,立場の違う2人の実務家の言葉を紹介しながら,実務家と研究者の架橋のあり方について言及しました。紹介された実務家の言葉というのは以下のものです。すなわち,1つは矯正の実務関係者からの言葉で監獄法改正の議論の中で研究者と実務家が理想と現実を語りながら施設の運用と被収容者の人権とが争われた時に,「理想ばかりをいう学者も問題だが,理想をなくした実務家はもっと問題だ」というもの,そして,もう1つは検察官による「実務においては,日常的な事件処理において理念,理念とだけ言っていられません。理念と現実との妥協の上で仕事をしなければならないのです。しかし,最初から理念を見失っている場合には,妥協すべきものがありませんから,まったく悩みを感じないで現実を肯定する処理を行うことになる。これでは困るんですね」というものでした1)。現場で活躍する実務家は,理想と現実の間で悩みつつ,一方でできる限りの理想を実務で活かしたいという姿勢こそが改革の力となるのであって,実務が理想を求める姿勢を失ってしまえば,実務の発展と改革は停止すると指摘されました2)。司法試験(第二次考査委員)及び日本刑法学会理事長を歴任し,民間で唯一の刑事政策に特化した研究施設である龍谷正講座第22号(成文堂,2001)123頁。 はじめに  229はじめにその人にあった「刑罰」を考えるということ

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