行為依存と刑事弁護
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44) ジョック・ヤング(青木秀雄ほか翻訳)『排除型社会:後期近代における犯罪・雇45) ジョック・ヤング(木下ちがやほか翻訳)『後期近代の眩暈:排除から過剰包摂46) 丸山泰弘『刑事司法における薬物依存治療プログラムの意義~「回復」をめぐる法廷関係者全員のゴールであって,そこに軸足を置いて,それぞれの専門家がそれぞれにできることを精一杯やるということが大事なのです。 この指摘は,今後の日本に対しても重要な示唆をしています。日本の「再犯防止」の考え方は,本人の立ち直りの支援の結果に再犯が抑えられたという側面よりも,本人の人権などは二の次で社会や市民の安全のために対策がとられる「再犯防止」の側面が強いです。こういった排除型社会44)を背景にした「再犯防止」は,社会安全のために人権が無視されることが起きます。これらは学説的にも自由刑純化論などの従来の学説でも反論の余地がありますが,むしろ現在の新自由刑の議論は過剰包摂型社会45)を背景にした「本人のためだから治療も強制される」という新たな保安処分論を引き起こしかねません。これが,筆者がクライアントを主体とした刑罰に依存しない薬物政策が必要であると考える理由の1つでもあります。このように,刑事罰を土台にして行う「より治療的」で「より福祉的」な薬物政策は依然として問題も抱えています46)。用・差異』(洛北出版,2007)へ』(青土社,2008)権利と義務~』(日本評論社,2015)264  第6章 その人にあった「刑罰」を考えるということ

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