刑事手続において行為依存の問題をどのように取り扱うのかについては,未だ,十分な議論がなされているとはいえません。弁護士も,検察官も,裁判官も,事件の背景にある行為依存の問題に気づかないまま終結しているケースも少なくないのではないかと感じています。本書においては,まず,弁護士が各過程で出会う方々の行為依存の問題に気づくためのポイントを解説した上で,性依存や窃盗症の弁護を多く担当する著者が,どのような問題意識をもって,どんな点に注意しながら弁護活動を行っているのかを紹介します。 その上で,精神保健福祉士・社会福祉士として,性依存・窃盗症治療の最前線に立って支援されている斉藤章佳先生より,それぞれの問題に対する治療的アプローチについて,解説いただいております。 さらに,刑事政策・犯罪学の専門家である立正大学法学部准教授の丸山泰弘先生より,主として薬物問題を題材に,研究者の視点から,依存症患者への刑罰の在り方について,考察,解説いただきました。 日本加除出版の皆さまに企画いただいたことをきっかけに,行為依存の問題を抱える方の弁護に注力している弁護士,及び,行為依存の問題の専門家である斉藤先生,丸山先生にお声がけをさせていただき,それぞれの立場から議論を重ねた上で,このたび,本書を出版する運びとなりました。 本書が少しでも皆さまの弁護活動のご参考になると同時に,このような行為依存に苦しむ方々が従来の刑事手続とは切り離される「問題解決型裁判所」の導入のきっかけになったら,こんなに幸せなことはありません。 令和3年2月弁護士法人ルミナス代表弁護士 中原 潤一ii はしがき
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