iはしがき 2020年初頭,人々は日常生活や社会生活において,経験したことのない制約を受ける状況に陥りました。この社会に適応するため,時差通勤,在宅勤務,テレワークなどの生活スタイルの変化を余儀なくされたのです。そして,仕事での出勤を控えるようになった一方で,書面に押印をするためだけに,出社せざるを得ない事態が生じました。 かつての業務は,書面での処理がほとんどであり,はんこ文化が根強く慣習となっていたため,誰もがこの押印という慣習に疑問を抱くことさえなかったのです。しかし,社会情勢の急激な変化に伴い,今世の中はデジタル社会に移行しつつあります。 法務省は2020年6月に商業登記申請に利用できる新しい電子証明書として事業者署名型(立会人型)電子署名を認め,その電子証明書(クラウドサイン)を利用することによって,簡便な操作により電子署名(電子署名と共に承認した旨が記録される形式)ができるようになりました。 本書では,アナログ社会で書面に署名又は記名押印していた書類について,デジタル社会での電子ファイル(PDFファイル)に記名と電子署名を付与する実務をメインとして,Q&Aと解説形式でわかりやすく解説をしています。 第1章では,デジタル社会,押印,電子署名制度の基礎知識,第2章では,株式会社の株主総会,取締役会などの議事録記載例や押印実務についても詳細に掲載しています。また,第3章では,実際にクラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社),商業登記に基礎を置く電子証明書及び個人番号カード(マイナンバーカード)による電子証明書を使った電子署名の方法や署名検証について,ブラウザの画面を入れてわかりやすいように解説を試みました。 本書は商業登記実務に精通した司法書士に執筆を依頼し,その知見に基づき詳細な解説を提供できたのではないかと思っています。また,電子証明書を使った電子署名の方法やその署名検証(改ざんの有無,有効性確認)はしがき
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