第1章1 民事信託とは 信託は,特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすることと定義されますが(信託法2条1項),一言でいえば,「財産管理」と「財産承継」のための制度といえます。このうち,我が国では,主として,家族の財産管理・財産承継のために利用される信託を民事信託と呼んでいます(神田・折原5頁)。 財産管理のための制度としては,法定後見がよく知られています。信託も同じように,委託者(法定後見では「被後見人」又は「本人」といいます)の財産を,受託者(法定後見では「後見人」といいます)が管理します。民事信託と後見制度との関係についてはQ6,民事信託と後見制度の併用についてはQ71を参照してください。 財産承継のための制度としては,現在では遺言が利用されています。民事信託は,遺言と同じように,特定の者へ財産を承継させるために利用することができます。民事信託と遺言との関係についてはQ7,民事信託と遺言の併用についてはQ75を参照してください。1Q1総論――民事信託の仕組みQ1民事信託とは,どのような制度ですか。
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