6_民信手
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2 信託の基本的構成要素 「委託者」とは,信託契約,遺言による信託又は自己信託により,信託をする者のことをいいます(信託法2条4項)。 委託者は,信託財産となる財産を提供する者であり,民事信託は,この委託者の意思を実現するための制度ということができます。 なお,この委託者と後述する受託者や受益者は同一人が兼ねることができます。委託者と受益者が同一人である信託を自益信託といいます。自益信託と他益信託の区別については,Q3を参照してください。2 信託には,以下の6つの基本的構成要素があります。この基本的構成要素は,体系的に信託契約書を作成する際に参考になる概念です。⑴ 信託目的 民事信託は,一定の目的を達成するために設定されます(信託法2条1項)。これを「信託目的」といいます。信託目的は,委託者にとって信託によって達成しようとする基本的な目的であり,他方,受託者にとっては信託財産を管理又は処分等を行う際の指針となるものです(神田・折原42頁)。⑵ 信託行為 信託を行う法律行為のことを「信託行為」といいます。信託行為には,信託契約,遺言による信託及び自己信託の3類型があります(信託法2条2項,3条各項)。 民事信託は,実務上,ほとんどのケースにおいて信託契約によって設定されています。⑶ 信託財産 受託者に属する財産であって,信託により管理又は処分をすべき一切の財産のことを「信託財産」といいます(信託法2条3項)。 信託財産と対になる用語として「固有財産」があります。固有財産とは,受託者に属する財産であって,信託財産に属する財産でない一切の財産をいいます(信託法2条8項)。⑷ 委託者第1章 総論――民事信託の仕組み

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