3 民事信託の活用方法 また,委託者が受託者を兼ねることを自己信託といいます。これは信託契約や遺言による信託と並ぶ信託行為の一種です(信託法2条2項3号,3条3号)。自己信託については,Q5を参照してください。⑸ 受託者 「受託者」とは,信託行為の定めに従い,信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいいます(信託法2条5項)。 民事信託においては,信託財産の所有者等として大きな権限を有する受託者をどのように監視・監督するかがポイントになります。⑹ 受益者 「受益者」とは,受益権を有する者をいいます(信託法2条6項)。 また,「受益権」とは,信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(受益債権)及びこれを確保するために信託法の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいいます(信託法2条7項)。 民事信託は,あくまでも信託財産から利益を受ける受益者のために設定されるものです。民事信託の中には,受託者(多くの場合に委託者の子であり,かつ,帰属権利者又は残余財産受益者に指定されています)の利益を図ろうとしているケースも見られますが,それは信託の本質を理解していない,民事信託の誤った利用方法といえます。 前述のとおり,民事信託は「財産管理」及び「財産承継」のための制度です。そのため,民事信託の活用方法には,①委託者(兼受益者)の判断能力が減退しても,その影響を受けずに財産の管理を継続するために利用される認知症対策としての民事信託,②障がいのある子のために財産を遺し,かつ,その財産の管理も委ねる「親亡き後」のための民事信託,③世代を超えた財3Q1
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