2 信託の特色⑶ 受益債権は債権であることの意義 ここで重要なのは,受益債権は債権だということです。債権に関しては,当事者が自由に契約内容を定めることができるという「契約自由の原則」の適用があります。そのため,信託行為において,委託者及び受託者が自由に受益債権の内容を定めることができます(信託法2条7項参照)。 信託では,当事者等として委託者,受託者及び受益者の三者が登場することはQ1で解説しました。そのうち,受託者は特定の財産の権利者であり,受益者はその財産権から生じる利益を受ける者です。このように,信託では,形式的な権利帰属者(受託者)と実質的利益享受者(受益者)とが分かれているところに最大の特色があります。 その結果,対外的に受託者が権利者になっているため,仮に,委託者兼受益者の判断能力が減退しても,その能力の減退が第三者との契約関係には影響を与えません。例えば,不動産を第三者に賃貸しているケースにおいて,民事信託を利用していなかった場合,委託者兼受益者の判断能力が減退したときには,賃貸借契約を更新するために後見制度を利用することが必要になります。他方,民事信託を活用していれば,形式的な権利者である受託者が賃貸借契約の当事者となり,第三者との間の賃貸借契約を更新することができます。そして,この場合において,当該賃貸借契約から生ずる利益は,実委託者物権的効力信託財産受託者受益者受益権債権的効力5Q2
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