2 他益信託3 実務における利用方法委託者別人受託者受益者 他益信託とは,委託者と受益者とが別人の信託をいいます。他人のために信託を設定することは,他益信託と呼ばれています。⑴ 自益信託によりスタート イギリスにおける本来のトラストは,他益信託が基本形態といわれていますが(新井69頁),我が国の実務では,自益信託として設定されることが一般的です。これは信託税制の影響によるものです。つまり,我が国では,信託設定時に他益信託にすると,その時点で受益者に贈与税が課税されることになっています(相続税法9条の2第1項)。他方,自益信託を設定した場合には,受益者に贈与税は課税されません。そこで,実務では,信託設定時には自益信託からスタートすることが一般的になっています。 信託税制の基本については,Q95を参照してください。⑵ 自益信託から他益信託へ変化 自益信託と他益信託は固定的なものではありません。当初,自益信託でスタートし,第二次受益者に第三者が指定されていた場合や受益権が譲渡された場合(信託法93条参照)には,それが他益信託に変化します。 実務では,自益信託で信託をスタートし,その後,委託者の子などの相続人を第二次受益者に指定することにより,他益信託へ変化することはよくあることです。7Q3
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