2 遺言代用信託⑴ 信託法90条 遺言代用信託は,信託法90条に規定する「委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託」(同条1項1号)及び「委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託」(同項2号)をいい,遺言と同様の効果を実現するものです。 具体的には,以下のようなスキームが想定されます。まず,委託者と受益者が同一人の自益信託を設定します。そして,信託契約中に,委託者兼受益者の有する受益権を,委託者が死亡した時に,他の者に取得させる旨の規定をします。この場合,「他の者」は,通常,委託者の配偶者や子などの相続人が想定されます。その結果,委託者の死亡時に,委託者兼受益者の有する受益権を委託者の相続人に取得させることができ,つまり,遺言と同様の効果を実現させることができることになります。 この遺言代用信託は,信託契約によって設定されることが一般的です。⑵ 帰属権利者の指定 なお,信託の終了事由に「委託者の死亡」を規定し(信託法163条9号),帰属権利者(信託法182条1項2号)として,委託者の配偶者や子などの法定相続人を指定することがあります。その結果,委託者の死亡により,当該信託は終了し,残余財産を委託者の法定相続人に取得させることができます。 講学上,これを遺言代用信託とは呼んでいませんが,遺言と同様の効果を実現することができるスキームです。 なお,⑴の場合には,委託者の相続人が取得するものは受益権であるのに対し,⑵では,委託者の相続人が取得するのは残余財産であるところに違いがあります。法4条2項),原則として,遺言者の死亡時に効力が発生するということになります(民法985条1項)。9Q4
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