6_民信手
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3 遺言による信託と遺言代用信託の違い4 信託銀行が行う「遺言信託」について 遺言による信託と遺言代用信託の違いは,遺言と契約の違いということになります。 すなわち,遺言による信託は,自筆証書などの書面で行う必要がある要式行為であり(民法960条),15歳に達するという遺言能力が必要になり(民法961条),遺言者の意思によって撤回ができることになります(民法1022条)。また,自筆証書による遺言の場合には,家庭裁判所の検認が必要になります(民法1004条)。 他方,信託契約による遺言代用信託は,書面で作成するなどの特定の要式は不要であり,委託者の能力は民法上の行為能力に従い,遺言とは異なり自由に撤回することはできません。 もっとも,実務では,遺言代用信託であっても,内容を明確にする観点から,公正証書で行うことが一般的です。信託契約書を公正証書にすることについては,Q15を参照してください。 信託銀行は,「遺言信託」という名称のサービスを行っています。これは,信託銀行が行う遺言書保管と遺言執行のサービスのことを指します。法律上の規定に照らせば,金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条1項4号に規定する「財産に関する遺言の執行」ということになります。 一般の方が「信託」と聞くと,この信託銀行が行っている「遺言信託」が頭に思い浮かぶと思いますが,実は,この「遺言信託」は信託とは直接関係はないということになります。10第1章 総論――民事信託の仕組み

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