また,受益者に指定されているか否かにかかわらず,委託者の推定相続人を含む親族からもヒアリングする必要がある場合もあります。⑵ ヒアリング項目ア 客観的事実 まず,①委託者自身の生年月日,住所などの基本情報,判断能力及び健康状態,②推定相続人を含む親族関係及び親族相互の関係,③委託者が所有している財産の種類及びそれらの評価額,④委託者が取引をしている金融機関,⑤遺言書の作成の有無及び内容,⑥親族間の紛争の有無などを聴取する必要があります。イ 委託者の希望や想い また,上記の事項に加えて,委託者が民事信託を利用しようとする理由,民事信託によって何を実現したいのかなど委託者の希望や想いを聴取することになります。 一般的に,民事信託の利用を検討する場合には認知症対策などのニーズが想定されますが,初めから委託者の希望を決めつけて聴取することは厳禁です。民事信託は,柔軟に,委託者の希望を実現できるところに特徴がある制度です。弁護士としては,想像力を働かせ,委託者の真の希望を汲み取ることが求められます(四宮15頁⑵注1参照)。 なお,適切に信託契約書を作成するには,客観的な事実と委託者の希望や想いとは,区別して聴取することが大切です。ウ 民事信託と任意後見の使い分け ヒアリングを通じて,民事信託と任意後見のいずれの制度の利用が適切かも判断する必要があります。 民事信託と任意後見を使い分けるポイントについては,Q72を参照してください。32第2章 信託契約書等を作成する際に留意すべき事項
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