2 民事信託の組成に関する依頼者⑵ アンケート結果 回答の集計結果は,①「委託者となる本人のみ」(16%),②「委託者となる本人とその家族」(56%),③「委託者の家族のみ」(24%),④「委託者となる本人とその家族以外の第三者」(4%)というものでした。 注目すべきは,③「委託者の家族のみ」が24%もあったことです。この「委託者の家族」の多くは委託者の子,すなわち委託者の推定相続人と考えられます。⑴ 相談に来る委託者の家族の意図 委託者本人が高齢で外出ができないなどの事情があり,委託者の家族が委託者の代理として相談に来るということもやむを得ないと思います。 しかし,多くの場合は,委託者の推定相続人が,他の推定相続人を差し置き,自分だけ有利に親の財産を相続したいという意図の下,民事信託の相談に来るケースが多いと考えられます。 そして,その委託者の推定相続人は,自ら受託者となることも希望していることが通常です。こういった民事信託の利用が相続争いの前哨戦になっているといえます。⑵ 依頼者は委託者 ところで,民事信託に関する契約書等を作成する際の依頼者は誰かという問題があります。 依頼者は,当該事件の法的効果・経済的効果が誰に及ぶのかという事件の実体から判断するのが原則です(日本弁護士連合会弁護士倫理委員会『解説 弁護士職務基本規程(第3版)』(日本弁護士連合会,2017年))。そして,民事信託は,自らの財産を,誰に,どのような方法で管理・承継させたいかという委託者の希望を実現する制度です。そのため,民事信託における依頼者は,信託財産を拠出した委託者と考えなければなりません。そして,相談を受けた弁護士は,委託者の意思を実現する内容の信託契約書等を作成しなければ37Q13
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