6_民信手
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1 委託者の意思確認 Q13で紹介したとおり,民事信託では,委託者の推定相続人が,自分だけ有利に委託者の財産を相続したいという意図の下,民事信託の相談に来るなりません。 この点,委託者の推定相続人から相談を受けたことから,委託者の推定相続人が依頼者と誤解している士業もみられます。前述のとおり,委託者の推定相続人の多くは受託者となっているので,結局,この場合には受託者のために信託契約書を作成していることになります。また,同じく,受託者の財産管理をサポートすることが自らの業務と捉えているという理由から,依頼者は受託者と考えている士業もいます。 しかし,これらの考えは明らかに間違っています。前述したとおり,民事信託の信託契約書を作成する際の依頼者は委託者になります。委託者の財産をどのように管理処分するかが問題となっているにもかかわらず,委託者に監督される立場にある受託者のために業務を行うことは明らかな利益相反となります。 民事信託の組成に関わる場合には,委託者が依頼者であるということを十分に意識したうえで,委託者の利益を実現するための信託契約書を作成することを心掛けなければなりません。⑶ 信託契約書の作成報酬の負担者 以上のとおり,民事信託に関する信託契約書の事務を受任した際,依頼者は委託者となります。そのため,信託契約書の作成に係る報酬は,委託者が負担することになります。38第2章 信託契約書等を作成する際に留意すべき事項Q14委託者が高齢である場合に,注意することはありますか。

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