6_民信手
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2 委託者の能力の確認ケースが多くあります。また,そもそも民事信託は複雑な法律制度であり,一般の方が民事信託の仕組みを十分に理解することは容易ではありません。 そのため,高齢の委託者が本当に民事信託を利用したいのか,また,民事信託を利用して何を実現したいのかなどについて,委託者の意思を慎重に確認する必要があります。 委託者の意思確認の際,場合によっては,相談に同行してきた家族には席を外してもらうなどという対応が必要になることもあります。高齢の委託者の意思確認は非常に重要であるため,委託者本人からじっくりと事情を聴くようにすべきです。 委託者の能力としては,その意思能力と事理弁識能力が問題となります。⑴ 意思能力の確認 一般に,自らが行う行為の法律上の意味や結果を認識・判断する能力を意思能力といいます。従前より意思能力を有しない者が行った法律行為は無効であると考えられてきましたが,平成29年の民法改正により,「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは,その法律行為は,無効とする。」という規定が設けられ(民法3条の2),意思能力を有しない者の法律行為は無効であることが法律上明確にされました。 意思能力の有無は,問題となる行為ごとに個別に判断されます。例えば,単に千円あげるという贈与契約と,連帯保証人となったうえで自身の自宅を担保にするという保証契約ないし抵当権設定契約とでは,法律行為の複雑さや意味合いが全く異なり,それぞれの契約に求められる意思能力も違ってきます。 この点,民事信託は,信託行為によって幅広く内容を決めることができ,極めて自由度が高いというメリットがある半面,内容が非常に複雑になることもあります。また,一般に民事信託は,自身の財産を第三者に管理させる財産管理の側面と,自身の財産を第三者に承継させる財産承継の側面を有し39Q14

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