6_民信手
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1 公正証書にするメリット 他方で,信託契約を締結すると,受託者が信託財産を管理処分することになりますので,受託者が信託行為に従って信託財産を管理処分するか,不当な管理処分を行わないかを誰かが監督できるようにしておく必要があります。この点,信託法は,基本的には受益者が受託者を監督するものとしています(信託法2条7項参照)。 それゆえ,委託者自身を受益者とする自益信託においては,信託契約の効力発生後は委託者自身が受託者を監督していくことが求められているといえます。しかし,委託者兼受益者が元気なうちは自身で受託者を監督していくこともできるかもしれませんが,上記のとおり,信託は委託者の判断能力の低下に備える面を有しており,委託者兼受益者が受託者を監督することができなくなることも想定されます。その他,具体的なケースによって,受託者に対する監督を受益者に期待できないこともあるでしょう。 そこで,財産の管理処分を委ねる委託者としては,民事信託を設定するに際して,信託監督人を置くなどして自身の判断能力が低下した場合等でも実効性ある信託の監督がなされるよう備えておく必要があります。 民事信託における監督機関については,Q45以下を参照してください。 信託契約書を作成するに当たり,信託法上,信託契約書を公正証書にすることが義務付けられているわけではありません。しかし,以下に述べるとおり,信託契約書を公正証書にしておくメリットは小さくなく,公正証書にしておくことが望ましいと考えられます。42第2章 信託契約書等を作成する際に留意すべき事項Q15信託契約書は公正証書にする必要はありますか。その際の注意点はありますか。

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