6_民信手
43/56

⑴ 信託契約書の紛失等のリスク低減 民事信託は,Q1で解説したとおり,財産管理の側面と財産承継の側面を有しており,長期間にわたり,受託者による信託財産の管理処分が行われることが想定されます。契約当事者の判断能力の低下を見越して信託契約を締結することもありますし,契約当事者が死亡した後も民事信託が継続していくこともあり,信託契約の内容を契約の当事者に直接確認することができなくなることも多々あります。民事信託の対象とする財産の価値が非常に大きなものであることも決して珍しくありません。委託者,受託者,受益者,残余財産受益者等やそれらの相続人など,信託契約に利害関係を有する者も多く,信託契約について関係者の利益が相反したり,信託関係者の思惑がそれぞれ異なるということもあります。そのような観点から,民事信託は,信託契約書の紛失,偽造や変造,信託関係者間の紛争発生等のリスクが大きい類型の契約といえ,信託契約書を公正証書にしておくことはこれらのリスクの低減に役立ちます。⑵ 公証人によるチェック また,公証人は,法令に違反した事項,無効な法律行為及び行為能力の制限により取消し得る法律行為につき証書を作成することが出来ません(公証人法26条)。そのため,信託契約書を公正証書にする場合,契約者が考えるままに公正証書が作成されるわけではなく,契約者の意思能力の有無や契約内容に違法・無効となる点がないか等を公証人が審査することになりますので,信託契約書を公正証書とすることで,一定程度,契約の瑕疵のチェックを受けることができます。また,公証人の審査により,内容が不明瞭な信託契約書が作成されることを防止することも期待できます。⑶ 信託口口座の開設 なお,現状,信託口口座の開設の可否について金融機関により取扱いが異なっています(信託口口座については,Q60,Q104を参照してください)。信託契約書の作成に当たり,信託契約の内容のほか,信託契約書を公正証書にする必要があるか否かについても,信託口口座の開設を予定している金融機関に事前に確認しておくことが望ましい対応です。43Q15

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る