前書『信託法からみた 民事信託の実務と信託契約書例』の発刊から4年近くが経過しました。幸い,前書は各方面から評価していただき,多くの実務家に手に取ってもらうことができました。民事信託の普及および健全な発展に多少なりとも貢献できたのではないかと思っています。 一方,民事信託の実務では,東京地判平成30年9月12日(金融法務事情2122号85頁)に見られるように,民事信託が誤った使われ方をしている事例が非常に多くなってきています。その原因は,信託法を十分に理解せずに信託契約書が作られていることにあるようです。 信託は非常に柔軟な仕組みであり,事案に応じ様々な内容の信託条項を作ることができます。しかし,その信託条項の作成も,信託法や民法で認められている範囲で許されるものであり,信託法や民法を無視して好き勝手なことはできません。しかし,民事信託実務では,この当然の理屈が理解されていません。このような問題意識から,本書の執筆を始めました。 本書の特徴は,次の3点になります。 第1に,信託法やその基礎となる民法の条文を大切にして,各設問の検討を行っています。この点は,前書と変わらない基本方針です。 第2に,他の書籍では検討されていない多数の新しい論点を検討しています。特に,各執筆者の実務経験に基づき,民事信託の実務において,実際に問題となっている論点を紹介しています。はしがき iiiはしがき
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