第1章 総 論第1章 総 論11 財産分与とは 財産分与とは,離婚に際して,夫婦の一方が他方に対し,婚姻中に築いた財産を分配することをいう。離婚の際に,夫婦の一方は相手方に対して財産の分与を請求することができ,当事者間で協議が調わないときには,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる(民768条1項・2項)。離婚成立から2年以内であれば,財産分与請求をすることができる(民768条2項)。 財産分与には,基本的に清算的要素,扶養的要素,慰謝料的要素が含まれていると解釈されている。このなかで,実務上問題となるのは専ら清算的財産分与であるため,本書では清算的財産分与における実務上の問題点について取り扱う。2 財産分与の対象財産⑴ 対象財産 財産分与の対象は,夫婦が婚姻中に協力して得た財産である(民768条3項)。 実務においては,婚姻後,夫婦生活の中で得られた財産は2人の協力によって取得されたものであるから,その名義にかかわらず,これを分与するのが相当であるとの考え方がとられている(最二小判昭46・7・23民集25巻5号805頁)。 したがって,夫婦の共同生活中に形成された財産は,夫婦の一方の名義の財産であっても,実質的には夫婦の協力によって形成された財産であるとして,財産分与の対象となる。2 財産分与の対象財産
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