3 財産分与の基準時 財産分与の対象財産の基準時は,夫婦間における経済的な協力関係が終わった時点となる(『松本』58頁)。別居が先行している場合には,別居時に存在していた財産,別居が先行していない場合には離婚時に存在していた財産が財産分与の対象財産となる。 また,財産分与の対象財産の評価についての基準時は,原則としては,財産分与請求権が行使された時点(分割時)となる(『松本』64頁)。実務上は,不動産や株式などの評価額が変動するものについては分与時の評価額とする。他方で,預貯金や保険の解約返戻金などは,基本的に財産価値に変動がないので,別居時を基準としている。4 財産分与の割合 財産分与の割合は原則として2分の1である(『秋武』311頁)。 しかし,清算的財産分与は夫婦間の財産関係を実質的に分配するものであることから,双方の寄与割合を考慮し,寄与度に応じての分与割合とすることが適正と判断されることもある。2⑵ 特有財産 特有財産とは,夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産であり,夫婦の一方が単独で有する財産をいう(民762条1項)。 婚姻前から有している預貯金や,婚姻中に相続や贈与で得た不動産などは,原則として特有財産にあたり,財産分与の対象とならないことになる。 他方で,夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定される(民762条2項)。 特有財産については,その主張をする側が立証責任を負う。特有財産であることを立証しない限りは,共有の推定がはたらくこととなるため,財産分与の対象財産と考えることになる。4 財産分与の割合
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