8_ケ分与
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第1章 総 論7基準にしてこれを行うのが妥当と考えられるためである。2 基準事後の資産の増減 1で述べたとおり,財産分与の基準時は別居時であり,別居後の資産の増減は,考慮されないのが原則である。 しかし,別居後に,一方が保有資産を減少させたが,それが生活費や教育費の補足のためであれば減少後の資産を対象とする場合がある。 また,別居後も一緒に事業を行って,財産形成に寄与したというような場合には,増加後の資産を対象とすべく,離婚時を基準時とする場合もあろう。3 本事例の解決方法 本事例では,夫は,妻に対し,調停で定まった月額16万円の婚姻費用を支払っていたが,子が大学生であるため,年間約100万円の学費が必要となった。妻には貯蓄はなかったため,夫は,妻及び子の要請に応じて,約100万円の学費を全額負担していたが,これを財産分与で考慮すべきである旨を主張した。 裁判所は,これを認め,基準事後の支出ではあるが,それが子どもの教育費のための支出であることから,財産分与で考慮すべきである旨の心証が開示されたことで,結果的に和解が成立した。 具体的には,財産目録上,別居時の夫名義の財産は1200万円であるところ,妻名義の財産は80万円であった。 とすると,原則は,財産分与で夫から妻に分与すべき額は,560万円になる。 ところが,前述の100万円の支出により,夫名義の財産は,1100万円に減少していた。 裁判所は,この100万円の支出を財産分与で考慮するのが相当であるとして,夫名義の財産を1100万円とみなし,分与額を算出した。ケース1 別居後の資産の減少が財産分与において考慮された事例

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