8_ケ分与
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 離婚事件においては,親権,養育費,面会交流,財産分与,慰謝料,年金分割等の離婚条件について,当事者間の意見が対立することがある。そのような離婚条件の中でも,特に財産分与は複雑であり,解決までの期間が長期化する傾向にあると実感している。実際,平成30年の司法統計によれば,財産分与の申立てがある離婚訴訟の平均審理期間が16.5か月であり,同申立てがない離婚事件の平均審理期間11.4か月と比べて長期化している(家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等)。 また,令和元年における離婚訴訟の既済件数の合計7829件のうち,財産分与の付帯処分の申立てがあった件数は2938件にも上っており,離婚訴訟の約37パーセントの事案において,財産分与が争点となっている(最高裁判所事務総局「人事訴訟事件の概況」(令和2年6月))。これは離婚訴訟のみの数値であって氷山の一角である。このほかに離婚調停や離婚協議が加わるため,今日,多くの法律実務家が財産分与の問題に直面し,対応に苦慮されていることが想像に難くない。 財産分与が複雑化するのは,その対象となる財産の範囲・評価・分与の⽅法をめぐって当事者間の意見が対立しやすいからである。また,相⼿⽅が財産開⽰に消極的な場合や,開⽰してもその内容を信⽤できない場合,財産分与の前提として,対象財産を確定するための調査が必要となる。このように財産分与において,法律実務家が対応すべきことは多いが,調査・評価⽅法についての網羅的な参考図書はあまり見当たらない。さらに,財産分与の課税リスクの判断については,税務の知識もある程度必要となるため,離婚問題を数多く扱う弁護⼠であっても難易度が高いと思われる。 弊所には離婚事件に注力する弁護⼠で構成される離婚事件チームがあり,年間700件超えの離婚相談を受けている(2020年)。同チームでは,離婚事件に関してのノウハウを高めるために,長年にわたってチーム内で解決事例iはしがきはしがき

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