(試し読み)遺言執行者の職務と遺言執行の要否
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1  遺 言1第1章1 遺 言 1 遺言の執行は,遺言が効力を生じた後に,その内容を実現するために必要な一切の事務をとることですが,その遺言を執行すべき者として指定又は選任された者が遺言執行者です。この遺言執行者は,亡き遺言者の意思を実現するために職務を行います。 本章は,遺言執行者の職務の拡大と,遺言執行者が選任されるまでの手続を説明します。⑴ 意 義 遺言とは,個人の最終意思が一定の方式のもとで表示されたものである。すなわち,法律上,遺言者の死亡後に,既に権利主体でなくなった遺言者の一方的な意思表示のみでその効果意思どおりの効力を発生させるものである。⑵  遺言事項法定の趣旨 遺言は,表意者が死亡してはじめて効力を生じるところ(民985条1項),表意者の死亡後は,事情の変更に適合するよう意思表示を変更することはできない。したがって,遺言に効力を認めることは,遺言者死亡後の事情の変更を無視することになる場合があり得るから,遺言が認められる範囲を制限される(近藤英吉『判例遺言法』(有斐閣,1938年)100頁参照)。また,「遺言の内容が利害関係人や社会公共の利益に影響を与えることは少なくない。そこで,民法は,遺言の明確性を確保するとともに,後日の紛争を予防するため,遺言をすることができる事項を限定した。」(潮見・360頁)。遺言の執行と遺言執行者の選任(総論)Eyes

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