(試し読み)遺言執行者の職務と遺言執行の要否
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はしがき i 遺言の執行とは,遺言の効力発生後,遺言内容を実現するために必要な処理を行うことであるが,遺言執行者に就任した場合,「遺言執行に必要な処理行為とは何か」について,その遺言内容ごとに遺言を執行する余地があるか否かを含めて個別的に判断することが求められる。 かかるところ,平成30年7月6日に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号)は,遺言の利用を促進するための方策を盛り込むほか,遺言の円滑な実行を図るために遺言執行者の権限を明確化し,また,特定財産承継遺言や相続分の指定がされた場合について対抗要件主義を適用するものとして,規律を見直したことから,改正前において定説とされていた遺言執行者の職務内容は大きく変容することになった。 そこで,本書は,この見直しを受けて,遺言執行者の職務内容,遺言事項と執行の要否等の遺言執行の実務を新たに検討するものである。 本書は,平成26年7月に日本加除出版から発刊した「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務」のうち「第4編 遺言執行者」の編集方針を踏襲した上,前記民法改正等を踏まえた条文解釈,争点,視点などを解説し,設問を検討することで理解が深まるように構成した。 本書の特徴は,第1に,遺言執行者に就任後,遺言を執行していく上において留意すべき点を示すことで,得られた実務上の知識を今後の職務に活用していただき,また,職務の過程で使用される書面の記載例を多数示すことで,遺言執行を迅速に行えるよう工夫した。 第2に,遺言,遺贈,遺言事項等の基礎的事項を解説するとともに,今般の改正により規律された特定財産承継遺言,相続分の指定,分割方法の指定につき論点を整理した。 第3に,遺言執行と遺留分・相続財産清算人(管理人)との関係について検討を加えたほか,令和3年法律第24号による民法改正と関連するはしがき

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