(試し読み)遺言執行者の職務と遺言執行の要否
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【参考】  相続分の指定,特定財産承継遺言,遺贈における対抗構成による処理(潮見・309頁) 被相続人Aは,「甲地を妻Wに相続させる」との自筆証書遺言を残して死亡した。相続人は,妻Wと子BCである。Bは,法定相続分による相続を原因とする共有登記をし,自己の持分をDに処分し,Dは持分権移転登記手続を了している。Wは,所有権移転登記なくしてAからWへの所有権移転を第三者であるDに対抗できるか。184 第8章 特定財産承継遺言・相続分の指定等の執行件を具備することがその職務権限とされたことから,遺言執行者の登記手続義務の関係については争いはなくなった。 「対抗構成による処理は,①遺産分割がされた場合のみならず,②相続分の指定がされた場合,③遺産分割方法の指定がされた場合(とりわけ,特定財産承継遺言がされた場合),④遺贈がされた場合についても,等しく妥当する。899条の2第1項は,このことを示すものである……」設例8−4特定財産承継遺言と対抗要件具備【解 説】 Wは,登記なくして自己の権利取得を第三者Dに対抗することはできない。 改正前民法下の解釈では,「相続させる」旨の遺言を受けたWは,登記なくして自己の権利取得を第三者Dに対抗することができると解されていた。 しかし,改正により,対抗要件主義に基づき,Wは,法定相続分を超える権利の承継については,対抗要件の具備なくして第三者Dに権利の取得を対抗することはできないこととなった(民899条の2第1項)。 なお,民法899条の2第1項の規律は,法定相続分に従い各相続人が有している個別財産上の持分については,各共同相続人は,登記の有無を問わず,当然に第三者に自己の権利を主張することができる(潮見・308頁)。

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